2026年5月10日

「根の治療って、どうして何回も通わないといけないの?」
根管治療を受けている患者さんから、よくいただく疑問です。
痛みが落ち着いてくると、
「もう治ったのでは?」
「あと何回かかるの?」
「何度も通う必要があるの?」
と感じる方も多いと思います。
しかし根管治療は、単に痛みを取る治療ではありません。
歯の根の中に入り込んだ細菌や汚れをできるだけ減らし、再感染しにくい状態に整えてから、根の中をしっかり密閉する治療です。
そのため、歯の状態によっては複数回の通院が必要になります。
根管治療とは、歯の根の中をきれいにする治療です
根管治療とは、歯の中にある「根管」と呼ばれる細い管の中を清掃・消毒する治療です。
歯の神経が強いむし歯で炎症を起こした場合や、神経が死んでしまった場合、根の中に細菌が入り込むことがあります。
そのまま放置すると、根の先に膿がたまったり、噛むと痛みが出たり、歯ぐきが腫れたりすることがあります。
根管治療では、感染した神経や汚れを取り除き、根の中を消毒し、最終的に薬を詰めて密閉します。
なぜ根管治療は1回で終わらないことがあるの?
①根の中の形がとても複雑だから
歯の根の中は、単純な一本の管ではありません。
実際には、根管が曲がっていたり、細くなっていたり、枝分かれしていたりします。
特に奥歯は根の本数が多く、内部の構造も複雑です。
そのため、むし歯を削る治療のように「悪いところを取って終わり」とはいきません。
細い器具を使いながら、少しずつ根の中をきれいにしていく必要があります。
②根の中の細菌をできるだけ減らす必要があるから
根管治療で大切なのは、根の中の細菌をできるだけ減らすことです。
神経が死んでしまった歯や、根の先に膿がたまっている歯では、根の中に細菌が多く存在していることがあります。
その場合、1回の処置だけで完全にきれいな状態にすることが難しいことがあります。
器具で汚れを取り除き、薬液で洗浄し、必要に応じて根の中に薬を入れて、症状の変化を確認しながら進めます。
③痛みや腫れの変化を確認しながら進めるため
根管治療は、毎回の反応を見ながら進める治療です。
たとえば、次のような症状がある場合は、すぐに最終的な薬を詰めず、経過を確認することがあります。
強い痛みがある
歯ぐきが腫れている
根の中から膿が出ている
噛むと強く痛い
過去に根管治療を受けた歯の再治療である
このような状態で無理に根の中を密閉してしまうと、感染や炎症が残ったまま閉じ込めてしまう可能性があります。
そのため、痛み・腫れ・膿の有無・噛んだときの違和感などを確認しながら、最終的に詰めてもよい状態かどうかを判断します。
根管治療は必ず何回もかかるの?
すべての根管治療が、必ず何回も必要というわけではありません。
歯の状態によっては、比較的少ない回数で終わることもあります。
たとえば、神経がまだ生きている歯、感染が少ない歯、根の形が比較的シンプルな歯では、治療回数が少なく済む場合があります。
一方で、次のようなケースでは通院回数が多くなりやすいです。
・根の先に膿がたまっている
・歯ぐきが腫れている
・神経が死んでから時間が経っている
・過去に根管治療を受けた歯の再治療
・根管が細い、曲がっている、見つけにくい
・奥歯で根の本数が多い
つまり、「回数が多い=悪い治療」「1回で終わる=良い治療」とは限りません。
大切なのは、歯の状態に合わせて、必要な処置をきちんと行うことです。
痛みがなくなっても、治療が終わったわけではありません
根管治療中に痛みが落ち着くと、
「もう治ったのでは?」
と思われる方もいます。
しかし、痛みがなくなったことと、根の中の治療が完了したことは同じではありません。
根管治療のゴールは、痛みを一時的に取ることではなく、根の中を清掃・消毒し、再感染しにくいように密閉することです。
さらに、その後に土台や被せ物を入れて、歯をしっかり守るところまで進める必要があります。
治療途中で通院をやめるとどうなる?
根管治療で特に注意していただきたいのが、治療途中で通院をやめてしまうことです。
根管治療中の歯は、仮のふたで一時的に封鎖している状態です。
この仮のふたは、最終的な詰め物や被せ物ほど強いものではありません。
期間が空きすぎると、仮のふたがすり減ったり、外れたりすることがあります。
そこから唾液中の細菌が根の中に入り込むと、治療が振り出しに戻ってしまうこともあります。
場合によっては、再び痛みや腫れが出たり、歯を残すことが難しくなったりすることもあります。
「痛くなくなったから大丈夫」と自己判断せず、最後まで治療を続けることが大切です。
根管治療の回数は、歯の状態によって変わります
根管治療に必要な回数は、歯の状態によって異なります。
感染が少なく、根の形が比較的シンプルな場合は、少ない回数で終わることがあります。
一方で、感染が強い場合、膿が出ている場合、再治療の場合、根の形が複雑な場合には、複数回の通院が必要になることがあります。
当院では、歯の状態、感染の程度、症状の変化を確認しながら、必要な治療をできるだけ無駄なく進めるようにしています。
まとめ|根管治療は歯を残すための大切な治療です
根管治療は、患者さんにとっては通院回数が多く、負担に感じやすい治療です。
しかし、根管治療は歯を残すための土台となる、とても重要な治療です。
根の中は目に見えにくく、形も複雑です。
そのため、細菌や汚れを丁寧に取り除き、症状の変化を確認しながら進める必要があります。
「根の治療が長引いている気がする」
「あと何回くらいかかるのか不安」
「痛みがなくなったけど、通院を続ける必要があるの?」
このような疑問がある方は、遠慮なくご相談ください。
治療の進行状況を一緒に確認しながら、できるだけ納得して通院していただけるようにご説明いたします。
参考文献
American Association of Endodontists. Treatment Standards White Paper.
Mergoni G, et al. Single versus multiple visits for endodontic treatment of permanent teeth. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2022.