2025年12月08日
むし歯治療のご説明をしていると、患者さんからよくいただくのが
「詰め物と被せ物って何が違うんですか?」
「どっちのほうが長持ちしますか?」
というご質問です。
どちらも「むし歯を治すための方法」ですが、役割も構造も大きく異なります。
ここでは、専門用語をできるだけ使わず、わかりやすく解説します。
■ 詰め物(インレー)とは?
● 小さめ〜中くらいのむし歯に使う治療
歯の欠けた部分が比較的少ないときに、その欠けた部分だけを補う“パーツ”のようなものが「詰め物」です。
イメージとしては、**歯の“部分修理”**です。
● 主な材料
金属(保険適用)
コンポジットレジン(白い樹脂)
セラミック(自費)
● メリット
削る量が少ない
治療回数が短い(当日〜数日)
違和感が少ない
● デメリット
むし歯の範囲が広いと強度が不足する
割れやすい場所だと長持ちしにくい
歯との境目が多く、二次むし歯のリスクがやや高め
■ 被せ物(クラウン)とは?
● 歯の上に“帽子”のようにかぶせる治療
大きなむし歯や欠損がある場合、部分修理では強度が足りないため、
**歯全体を覆って守る“フルカバー”**が必要になります。
これが「被せ物」です。
● 主な材料
金属(保険適用)
CAD/CAM冠(保険で白い材料)
ジルコニア・セラミック(自費)
● メリット
歯を全体的に保護し、割れにくい
むし歯が大きくても治療が可能
見た目を自然に仕上げやすい(特にセラミック)
● デメリット
詰め物より削る量が多い
製作に数日かかる
適合が悪いと二次むし歯のリスクが上がる
■ では、どっちが長持ちするの?
結論は…
✔ ケースによって違います
むし歯の大きさ、噛み合わせ、歯質の厚みなどにより、
適した治療は変わります。
ただし、一般的な傾向として次が知られています。
■ 長持ちしやすい傾向(エビデンスに基づくまとめ)
● ① “適応が合った”被せ物のほうが長持ちしやすい
歯の欠けが大きいのに詰め物を選ぶと、歯が割れたり、詰め物が欠けたりするリスクが上がります。
一方、被せ物は歯を丸ごと包むため、力が分散され耐久性が高い場合が多いです。
● ② 材料別の耐久性(代表的研究より)
•セラミッククラウン:10年生存率 90〜95%
•金属クラウン:10年生存率 90%以上
•セラミックインレー:10年生存率 70〜85%
•コンポジットレジンインレー:やや低め(亀裂・変色など)
※歯科補綴学の長期研究より(詳細は文献参照)
つまり、
大きなむし歯 → 被せ物のほうが長期的に有利
小さなむし歯 → 詰め物で十分長持ち
という傾向があります。
■ どっちを選ぶべき?
✔ 医師が提案する治療は「その歯を長く守れる方法」です。
治療後に長持ちするかどうかは、材料よりも 適切な治療選択 が大きく影響します。
「詰め物では強度が足りない」「被せ物が必要」といった説明がある場合、
将来的なトラブルを防ぐための根拠に基づいた提案です。
■ 長持ちさせるために最も重要なこと
毎日の歯磨き
定期的なクリーニング
噛み合わせのチェック
これらを徹底することで、詰め物でも被せ物でも寿命は大きく延びます。
■ まとめ
①詰め物=部分修理/被せ物=歯全体を守るフルカバー
②むし歯の“大きさ”が治療選択の大きなポイント
③適応が合えばどちらも長持ちする
④一般的には「大きなむし歯 → 被せ物」が耐久性で有利
⑤最も大事なのは治療後のケア
■ 参考文献(一次情報)
・Shillingburg HT. Fundamentals of Fixed Prosthodontics. Quintessence Publishing.
・Rosenstiel SF, Land MF. Contemporary Fixed Prosthodontics. Mosby.
・日本補綴歯科学会 編『補綴歯科学』医歯薬出版
・厚生労働省「歯科保健情報」
・Christensen GJ. Longevity of restorations: JADA, 2005.
(※研究により数値には幅があります)