
顎関節症
顎関節症
顎関節症(がくかんせつしょう)は、「あごの関節が痛む」「カクカクと音がする」「口が開けにくい」といった症状がみられる病気です。
多くは、最初に耳の前あたりでカクカクと音が鳴るようになり、その後、あごの痛みや開口障害(口が大きく開かない)が出てくることがあります。
音だけの段階では、悪化を防ぐために、正しい知識と日常生活での注意が大切です。一方、痛みや口が開かないといった症状がある場合には、治療が必要になります。
顎関節症の原因はひとつではなく、はっきり分からないこともありますが、「歯の欠けや噛み合わせの問題」「食いしばりや歯ぎしり」など、歯科医院で対応できることも多くあります。
以前は「噛み合わせの悪さ」が主な原因と考えられていましたが、近年の研究では、噛み合わせは一因にすぎず、実際にはさまざまな要素が関係していることがわかってきました。
主な要因としては以下のようなものがあります。
たとえば、次のような習慣があごに負担をかける原因になることがあります
このように、顎関節症は生活習慣とも深く関わっており、原因はひとつに限られません。
生活習慣の改善
歯を食いしばったり、無意識に上下の歯を合わせ続けるクセがあると、あごの関節や筋肉に大きな負担がかかります。血流が悪くなることで痛みやだるさの原因にもなります。
このような習慣をやめるために、「気づき(認知)」と「行動の修正」を組み合わせた方法(認知行動療法)などを使ってアドバイスを行います。また、食事の仕方や姿勢など、日常生活での注意点についても指導します。
顎関節の整位(せいい)
関節の中にあるクッションの役割をする「関節円板」がずれて口が開きにくくなっている場合、適切な力をかけることで引っかかりを解除できることがあります。
また、口を大きく開けたあとに「口が閉じなくなった(あごが外れた)」場合には、元の位置に戻す処置を行います。
顎のストレッチ
ストレッチをすることで、関節や靭帯をやわらかくし、動かしやすくします。血流がよくなり、関節内の潤滑液(関節をスムーズに動かす液)の分泌も促されます。
ストレッチの指導
院内だけでなく、自宅でも続けられるように、簡単なストレッチ方法をご紹介します。回数や頻度なども含めてご説明します。
※代表的な方法は、別ページで詳しくご紹介します。
マッサージの指導
あご周りの筋肉の痛みやこわばりがある場合には、自宅でできるマッサージ法をお伝えします。
※代表的な方法は、別ページでご紹介予定です。
夜間の歯ぎしりや食いしばりが、顎関節症を悪化させている場合には、専用のマウスピース(スプリント)を作製して就寝時に装着します。
マウスピースには、次のような効果があります。
ただし、効果には個人差があります。劇的に改善する方もいれば、あまり変化を感じない方もいます。
費用は健康保険適用で、3割負担の方でおよそ5,000円程度です。
あごの痛みが強いときや、関節に炎症がある場合には、痛みや炎症をおさえる薬(鎮痛・消炎薬)を処方します。
また、周囲の筋肉がこわばっていて強い痛みが出ているときには、筋肉の緊張をゆるめる薬(ボトックス)を使うこともあります。
症状の程度に合わせて、必要な薬を選んで使用します。
MRIで明らかな異常が見つからなくても、あごの周囲の筋肉や靭帯に負担がかかっていることで痛みが出ることがあります。特に食いしばりやストレス、姿勢の悪さなどが原因で、筋肉に炎症やこわばりが起きている可能性があります。
マウスピースだけでは改善しない場合、理学療法(あご周囲のストレッチやマッサージ)、噛み合わせの調整、姿勢改善、ストレス管理などの複合的なアプローチが必要になることがあります。状態によっては、専門医の診察のもとで次の治療ステップを検討します。
あごの筋肉にボトックスを注射すると、筋肉の緊張がやわらぎ、食いしばりや痛みが軽減されることがあります。効果は通常3〜6ヶ月ほど続きます。副作用として、一時的な違和感や力の入りづらさ、注射部位の腫れなどが起きることがありますが、重篤な副作用はまれです。
スマホを見るときに首が前に出たり、猫背になったりすると、あごや首の筋肉に負担がかかります。次のような工夫が有効です。
・スマホは目の高さに持ち上げて見る
・長時間の使用を避け、30分に一度は姿勢を整える
・背筋を伸ばして座るよう意識する
・首や肩を軽くストレッチする習慣をつける
関節円板(あごの関節内のクッション)がずれていても、多くは保存的な治療で改善します。ただし、強い痛みや口がほとんど開かない、日常生活に大きな支障が出ている場合などは、手術を検討することがあります。まずは非外科的な治療を十分に行ったうえで、専門医と相談することが大切です。
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