
マイクロエンド(根管治療)
マイクロエンド(根管治療)
根管治療は、むし歯菌に感染した歯髄や細菌の固まりなどの汚れをきれいに取り除き、痛み・症状を抑えて歯の寿命を伸ばす治療です。
神経が死んでしまった歯の中では細菌が増えやすく、根の先から顎の骨にまで広がることがあります。その結果、副鼻腔炎や骨髄炎といった深刻な病気につながることもあります。
根管治療は、歯科治療の中で大きな割合を占める治療であり、むし歯が進んで神経を取り除くケース以外に、下記のような症状にも適応されています。
むし歯や被せ物の除去
まずは、歯を削る器具を使ってむし歯や古い被せ物・詰め物を取り除きます。神経(歯髄)がまだ生きている場合は、痛みを感じるため麻酔をしてから処置を行います。再治療の場合には、以前に詰めた薬や土台もすべて取り除き、歯の中を露出させていきます。
感染した神経の除去と根管の拡大
次に、感染した神経や汚れを丁寧に取り除きます。専用の細い器具(ファイルやリーマー)を使って、根の先までしっかり清掃します。
歯の根(根管)は非常に細く、曲がっていたり分岐しているため、1本の歯でも前歯で1~2本、奥歯では3~4本の根管を1本ずつ処置する必要があります。きれいにした後は、薬を入れやすくするために根管の内側を少し広げていきます。
根管内の洗浄と消毒
器具での清掃に加え、薬剤によって根管の中を化学的に洗浄・消毒します。その後、仮のふたをして炎症が治まるのを確認します。症状の改善が見られない場合は、薬を交換しながら数回にわたって治療を繰り返します。
根管充填(薬を詰めて密閉)
炎症が治まり、根管内が清潔な状態になったら、再感染を防ぐために「根管充填」を行います。ガッタパーチャというゴムのような素材や、密封性の高いMTAセメントを使って、根の中をしっかりとふさぎます。
支台築造と被せ物の装着
神経を取った歯はもろくなりやすいため、樹脂や金属で歯の内側に土台(支台)を作って補強します。その上に被せ物を取り付け、元の形や噛む機能を回復させて治療は終了となります。
神経を取るだけのケース(抜髄)では、比較的短期間で治療が完了します。一方、すでに感染している歯(感染根管治療)の場合は、炎症のコントロールが必要なため、3〜6回程度の通院が必要になることもあります。治療回数は、歯の状態や症状の重さによって異なります。
当院では、マイクロスコープ、歯科用CT、ラバーダム防湿、ニッケルチタンファイル、MTAセメント、超音波治療器など、現在、根管治療に有用とされている設備(材料)や技術を積極的に導入し、より精密な根管治療を行っています。
根管治療で重要なのは精密性です。縫い針程度の太さしかない根管内を掃除する治療であり、細かい処置の連続でミクロン単位の正確さが求められます。歯を削り過ぎると、歯の根が折れてしまうリスクが高くなりますし、洗浄や消毒が不完全であると、細菌感染の再発リスクが高まります。これまで根管内部の治療は、歯科医師の「経験」や「勘」を頼りに手探りで行っていましたが、マイクロスコープの登場により、小さなものを大きく拡大して、1つ1つの繊細な処置を目で見て確実にできるようになりました。従来と比較すると、圧倒的に精密で質の高い治療を行うことができます。
当院では視野を20倍にまで拡大できる「マイクロスコープ」を導入し、より精密で確実な根管治療をめざしています。
歯科用CTは3次元の立体画像で歯のレントゲンを撮ることができる装置です。根管は複雑な形状であるうえ、歯によっては数本に分岐しています。根管の清掃・消毒を確実に行うためには、まず根管の構造や病巣の位置・大きさを正確に把握することが重要となります。その診査診断に役立つのが歯科用CTです。平面のレントゲン画像では確認できない細部も、歯科用CTの立体画像なら詳細に把握できるため、より一層精密な診査診断、治療が可能になります。
根管治療を行うと根管内の神経組織や血流がなくなり、歯の免疫力が全くない状態になります。そような歯の根管に、口の中の細菌が入り込むと増殖し放題となり、病気が再発してしまいます。ラバーダム防湿は、薄いゴム製シートで治療する歯以外を覆い、唾液中の細菌が根管内に侵入することを防ぐ、非常に重要な処置です。薬剤や治療器具の誤嚥防止、舌や頬粘膜のけがの防止、防湿による詰め物の接着強度の向上という効果もあり、治療には必須です。これにより、根管治療の成功率を飛躍的に高めることができます。
根管治療では、歯髄を除去するためにファイルと呼ばれる器具を使用します。このファイルには、一般に用いられるステンレスファイルと、ニッケルチタンファイルがあります。曲がりくねっている根管を掃除する際、ステンレスファイルでは硬すぎるために深部に入っていかずに、根管を傷つけてしまうことがありますが、ニッケルチタンファイルは超弾性の性質を持ち、曲がった根管にそってしっかり入っていきます。根管を不必要に傷つけることなく、精密に歯髄の除去が可能です。ただし、強度が弱く、施術者には破折を避ける熟練が求められます。
マイクロスコープ下の根管治療では、肉眼やルーペ下とは異なり、根管の細部までしっかり見えます。そのため、根管内部の細かい汚染物を除去したり、消毒薬を活性化させたりするために超音波治療器は不可欠です。
マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)やCTは、治療の精度を高めるために用いますが、保険診療ではカバーされない場合が多く、自費診療になることがあります。
費用の目安は以下の通りです。(医院により異なります)
マイクロスコープを使った根管治療:1本約5〜10万円(自由診療の場合)
当院では、事前に費用を丁寧にご説明し、ご納得いただいたうえで治療を進めます。
再発(根尖性歯周炎など)のリスクを下げるために、薬剤の選択は重要です。たとえば
•MTAセメント:殺菌性と封鎖性に優れ、特に再治療や穿孔部に有効。成功率は90%以上とする報告もあります。
•バイオセラミック系シーラー(例:AH Plus Bioceramicなど):従来の材料よりも緊密に根管を封鎖でき、長期的な安定性が期待できます。
保険診療では使用できない薬剤もありますが、自費治療でより高い成功率を目指すことができます。
ラバーダムは、唾液や細菌の侵入を防ぎ、治療を清潔に保つために非常に重要です。使用することで根管治療の成功率が高まると、多くの研究でも示されています。
ゴム製のためアレルギー(ラテックスアレルギー)が心配な方には、ラテックスフリーのラバーダムもご用意しています。事前に体質やご希望を確認し、安心して治療を受けていただけるよう配慮しています。
マイクロスコープやNi-Tiファイル(柔軟性のある器具)などの精密機器を用いることで、従来よりも治療回数を1〜2回に短縮できる場合があります。ただし、感染の程度や歯の状態によっては複数回必要になることもあります。
初回の診査・診断で大まかな通院回数をご案内できますので、遠慮なくご相談ください。
歯根端切除とは、根の先端に膿の袋(病巣)がある場合に、その部分だけを外科的に取り除いて歯を残す治療です。一方、抜歯は歯をすべて取り除くため、後にブリッジやインプラントが必要になります。
歯を残せる可能性がある場合は、歯根端切除で保存を目指す方が身体的・経済的負担も少なくなることがあります。CTで状態を詳しく確認し、メリット・デメリットを比較したうえで選択するのがよいでしょう。
通常、歯の神経に細菌が入り込んで痛みや炎症が起きた場合は、根管治療によって内部をきれいにし、薬剤で密封することで回復を目指します。
しかし、以下のようなケースでは、通常の根管治療だけでは改善が難しいことがあります。
このような場合には、歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)という外科的処置が検討されます。これは、歯ぐき側からアプローチして、炎症を起こしている歯の根の先端部分と病巣を直接取り除く治療法です。
根を残すための「最後の手段」とされる治療ですが、骨の状態や歯の破折状況によっては適応できない場合もあり、その際は抜歯を選択することになります。
根管治療は、重度のむし歯を抜歯することなく本来の歯の機能を取り戻す治療です。精密で質の高い根管治療をめざす当院に是非一度ご相談ください。
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